デスクワークや若齢層の人にも運動療法による腰痛・膝痛へのアプローチが有効な理由とは?
「体幹がしっかりしている」と聞くと、スポーツに励んでいるわけでもない自分には関係のない話だと思ってしまう方が多いようです。
しかし、立ったり座ったりしているときにも体幹は必要で、乱れてしまうと様々な不調を引き起こしてしまうことも。
体幹とは何なのか?どうやって改善していけばいいのか?
という点について、すこやか整骨院の矢吹晃平先生にお話を伺いました。
すこやか整骨院についての詳細はこちらをご覧ください。
運動量や年齢に関係なく腰や膝が痛くなるのはなぜ?
当院には、主に腰と膝に関するお悩みをお持ちの患者さんが多くいらっしゃいます。
「腰が痛くなるのは、重いものを持つなど重労働をする人だけ」
「膝が痛くなるのは高齢になってから」
なんて思っている方もいるかもしれませんが、デスクワークの方、働き盛りの年代が少なくありません。
運動不足が原因とは言い切れず、ウォーキングやジム通い、ストレッチをするなど自分なりに工夫をしている方もいます。
また、スポーツに励んでいる元気な小中学生からのご相談もあります。
そこにも、「ハードな運動をして負荷がかかっているから」とは言い切れない、体幹やインナーマッスル、呼吸法といった根深い原因が見えることがあります。
なぜ、まだまだ元気なはずの年代や、体が柔らかくて体力もたくさんある子供が、腰や膝を痛めてしまうのでしょうか。

立つ・座る だけの動作にも必要な“体幹”
「体幹」という言葉は、どなたも聞いたことがあると思いますが、どんなイメージを持っていますか?
片足立ちのまま長い時間立っていられる、走ったりジャンプをしたりしてもふらつかない、といった、「バランスが取れる」に近いイメージを持っている方が多いかもしれません。
もちろんそれは間違いではありませんが、体幹は決して、片足立ちをしたりジャンプしたりするときだけに必要なものではない、ということは覚えておいていただきたいところです。
「仕事はデスクワークだし、積極的にスポーツをするわけではない自分には関係のない話」、ではないのです。
むしろ、立つ・座る・歩くという基本的な動きをするときにこそ、体幹がしっかりしていることが求められます。
詳しく解説していきましょう。

「体幹が乱れる」とはどういうことか?体幹が乱れると何が起きるのか?
立つ・座る・歩く という姿勢や動作をするには、姿勢を保つのに必要な筋肉や、体幹、そして「腕を振る」 「足を前に出す」といった関節の動きが必要です。
立っている状態で考えてみましょう。
正しい位置に重心があればふらつくことなく、まっすぐ立つことができます。
一方で体幹に乱れがあると、例えば、後ろ(踵側)重心になっている状態で「自分はまっすぐ立っている」と認識してしまいます。
でも、後ろ重心というのはバランスが悪いですよね。放っておけばそのまま後ろに倒れてしまいます。
そのため、倒れないよう、腰を前に突き出して猫背にすることで人はバランスを取ろうとします。
それが習慣化されれば、腰を前に突き出して猫背でいるために必要な筋肉が体についていき、手や足の動きもそれに倣うようになります。
しかし腰を前に突き出すのが癖になれば、腰や股関節に痛みが生じます。猫背であれば肩こりや首こりがひどくなります。
そこで「腰を前に突き出さないようにしなきゃ」 「猫背を直さなきゃ」と思うわけですが、体幹がブレて後ろ重心がインプットされてしまっているので、直すのは容易ではありません。
足の裏の感覚からして、踵側に負荷がかかっている方が正しいような気がしてしまっているのですから、たとえ正しい位置に重心が来るよう立ってみても「なんか変な感じ」がしてしまうのです。
このような体幹のブレがある状態になってしまうと、腰をマッサージしても、姿勢改善を試みても、結局は痛みを繰り返すことになってしまいます。

三つ巴のアプローチが欠かせません
「じゃあ、体幹だけ整えればいいのか?」というと、それではやはり足りないでしょう。
正しくない姿勢や歩き方で、余計に緊張してしまった筋肉がありますし、本来ならばそれなりに発達していないといけないのにサボって緩んでしまった筋肉もあります。
過緊張の筋肉を緩め、サボった筋肉を目覚めさせることが、改善への近道です。
また関節も同じで、足の出し方(ガニ股、内股、歩幅が小さいなどなど)や腕の振り方、股関節の動き方も癖がついていますので、正しい動きに導いていく必要があります。
つまり、
・体幹を整える
・体幹をキープするのに必要な筋肉を刺激し、過緊張の筋肉を緩める
・正しい動きを身に付ける
という三つ巴のアプローチを行うことが不可欠なのです。

インナーマッスルを鍛えるのに役立つポール
当院ではそのように、三つ巴のアプローチで体幹・筋肉・動きを正していくことを「基礎土台を作る」という言葉で患者さんにご説明しています。
手技による腰や膝の痛みや違和感の軽減に加えて、インナーマッスルを鍛えるトレーニングや加圧トレーニング、重心のチェックなどを行います。
しかし、正しい姿勢を保つために必要な筋肉は意識して使う筋肉ではないので、なかなかお伝えが難しいのが実情です。
患者さんの体幹の状態、手技や筋トレを通して重心の位置の変化を感じることができているか、といった患者さんの感覚の確認は、状態を見つつ、コミュニケーションをとって行っていきますが、完全に把握することはできません。
そのため、当院ではストレッチポールやひめトレ🄬、アシスティックといった、日本コアコンディショニング協会(JCCA)が開発したツールを利用しています。

骨盤底筋にアプローチするひめトレ🄬
わかりやすい例として、ひめトレ🄬の効果についてご説明します。
体幹を支えるインナーマッスルの一つに、骨盤底筋群があります。
骨盤底筋群はその名の通り骨盤付近にあり、仙骨や恥骨などの骨を支える、排せつ機能を正常に保つ、などの機能があります。
中でも大切な働きが、姿勢保持に必要な腹筋、背筋などの体幹筋との密接なかかわりです。
腹筋と背筋だけで前後左右のバランスを取って姿勢を保つのではなく、骨盤低筋群を含んだ様々なインナーマッスルも複雑に関係しています。
ですから、体幹を整えて正しい姿勢を保持するトレーニングのためには、骨盤底筋群を刺激したいところなのですが「はい骨盤底筋に力を入れて」と言われても、どこに力を入れればいかわからない方がほとんどですし、サポートする側としても、患者さんが力を入れた部分が正しいかどうかを判断できません。
そこで活躍するのがひめトレ🄬です。
ひめトレ🄬は小さなポールで、サイズや弾力がしっかり設計されており、その上に座ると骨盤底筋が刺激されて収縮するのが感じられる仕様になっています。
患者さんに「この感覚か!」とすぐにつかんでいただけるので、体幹トレーニングがスムーズになり、改善までの時間を大幅に短縮することができます。

実際に使って、使い続けてみるとその効果がわかります
ストレッチポールやアシスティックも同様で、それぞれの機能を利用して、正しい位置・動き・軸 を感覚でつかむことができるツールです。
ここまで読んでいただいても、「理屈は分かったけど、そんなにいいものなの?」なんて半信半疑な方もいらっしゃるかもしれませんね。
そこは「実際に使ってみないとわからない」というのが正直なところです。
私は数年前、様々な施術の勉強をしている中でJCCAを知り、勉強会に参加しました。
ポールやひめトレ🄬の紹介をしてもらった際には「どうせポールなんて乗るだけでしょ?」と思っていたのをよ~く覚えています。
そしていざ乗ってみたら、自分の体の変化が驚くほど感じられて、本当に感動したものでした。
ただ乗って感覚をつかむだけでなく、いろんな使い方があることを学んで、これは患者さんにぜひ使っていただきたいなと思い、院に取り入れることにしました。
実際に患者さんに使っていただくと、可動域の広がりや姿勢の改善がすぐに感じられると大変好評です。
ストレッチやトレーニングのみのメニューだった頃に比べても、患者さんの改善は早まり、満足度も高くなっているように思います。
ただ、もちろんポールで体幹を整えるだけではなく、あくまで、先述した三つの面からのアプローチをしていくことが重要です。
ストレッチポールなどはいろんな種類がネット通販やスポーツ用品店で販売されていますが、自己流でポールに乗っておしまいにしてしまえば、体の改善を早めることはできませんのでご注意ください。

歯磨きと同じように毎日のケアが必要です
体幹ケアは一朝一夕に身に付くものではなく、時間をかけて感覚をつかみ、体を変えて行き、そしてキープしていくものです。
なぜなら私たちは、正しい姿勢、整った体幹だけで過ごせるような環境にいることはできないからです。
疲労やストレス、生活習慣、癖などで、どうしても体は本来あるべき正しい状態から離れてしまいます。
「1回やって覚えた」と思っても、だんだん形が崩れたり、感覚を忘れたりしてしまうものです。
歯のケアは、一度歯医者さんでしっかり磨いてもらって歯垢も歯石も取ってもらったからと言って、その後一週間は歯磨きしなくていいですよ、というわけにはいきませんよね。
食べて飲んで、唾液が出る限り、定期的に歯磨きをしなくてはなりません。
それと同じで、それぞれの環境で生活している限り、定期的に体幹ケアを行い、鍛えるべき筋肉を刺激し、正しい関節の動きを復習する必要があります。
当院にいらっしゃり、何年も悩まされた痛みや不調が改善して以降、再発せずに毎日を生き生きと過ごしていらっしゃる方は、そのことをしっかりと理解していらっしゃいます。
「治ったからよし」ではなく、セルフケアを継続し、また悪くならないためには何をすればいいかをわかって実践しているのです。
一方で、その点をいまいち自分事として落とし込むことができず、セルフケアをサボってしまったり、自分自身の意識を変えなければと思うことができないでいたりする方は、やはりどうしても改善までの時間もかかりますし、再発しやすいです。
「ご自宅でこれをやってみてください」とお伝えするセルフケア方法は、1つか2つですから、それをやるかが一週間後、一ヶ月後、一年後の体を作っていくのですね。
自分の体は自分で管理・改善していこうという気持ちが大事です。

お子さんの体幹が気になる方もご相談ください
2020年のコロナ禍の緊急事態宣言で、全国の学校が休校になり、子どもたちが自宅から出られない状況になりました。
それと関係があるのではないかと私は考えているのですが、体を充分に動かす機会が失われて、体幹を崩してしまっている子どもが増えているように思います。
転んでケガをする、関節や筋肉に痛みが出るなどの症状で来院するお子さんの体の状態を見ると、筋バランスが悪かったり、インナーマッスルがサボっているのが見て取れたりします。
腹式呼吸で深く呼吸ができない子も少なくありません。
痛みやケガを防止するのはもちろんのこと、より良いパフォーマンスを身に付けていくためにも、呼吸や体の基本的な使い方を身に付けることは重要です。
お子さんの体幹が気になる場合は、ご相談いただければと思います。

体幹を鍛えることの重要性と、運動療法についてついて解説してくださった矢吹晃平先生が院長を務める「すこやか整骨院」の詳細はこちらをご覧ください。