オスグッドの痛みを繰り返さないためには【ブレーキ筋】ではなく【アクセル筋】を使う。すると足も速くなる!
このオスグッド症について、スポーツ障害、特にスポーツに励む子どものサポートをオンラインでも行っている、京都市の「たかはし鍼灸整骨院」院長の高橋迪大先生に解説していただきました。
たかはし鍼灸整骨院についての詳細は、こちらのページをご覧ください。
スポーツに打ち込む子が悩まされるオスグッドの根本解決方法は?
オスグッドは成長期の子供にも見られることから、成長痛と混同されて見落とされる場合があります。
また、オスグッドという診断を受けても「安静にするしかない」と言われて休養を余儀なくされ、大好きなスポーツから遠のいてしまうという例も少なくありません。
そして、安静にして休んでいたからと言って完治するわけでもないのが、オスグッドの厄介なところです。
- 安静にしている間は良かったが、復帰したらまた痛くなった
- サッカーをしていないときは何ともないのに、いざ練習を始めてジャンプやダッシュをすると痛くなる
- 湿布やサポーターを付けているが、なかなか良くならない
こういった状況で悩むお子さん、またその親御さんのお話は頻繁に伺います。お子さんよりも親御さんの方が悩んでしまい、暗い顔をされていることも決して少なくありません。
お子さんが得意なスポーツに打ち込めないのは、親としてはとてもつらいものがありますよね。
ここでは「オスグッドは安静にしていても良くならない」というお話をします。
今まで聞いてきたこととは全く違う、真逆の視点かもしれません。
休養しても良くならず、再発を繰り返してしまうのは、「オスグッドになってしまう筋肉・体の使い方をしているから」です。
ですから、裏を返せば
「正しい体の使い方をすればオスグッドの痛みは消えるし、再発もしない」
ということになります。
参考にしていただき、お子さんがまた生き生きとサッカーや、お好きなスポーツに取り組めるようになれるよう導いていただければと思います。
オスグッドの一般的な治療方法では改善が難しい理由
オスグッドとは、膝のお皿の下にある脛骨粗面が引っ張られ、炎症を起こして痛みが生じる症状です。
脛骨粗面は成長軟骨と呼ばれ、子供の頃はまだ柔らかいので、周りの筋肉によってひっぱらられると伸びます。そして、引っ張られ続けると出っ張ってきて、炎症を起こすのです。
成長軟骨ですから、成長して固まれば痛みは治まるのですが、出っ張った部分がへこむことはないため、大人になって残っている方もいらっしゃいます。
このようなオスグッドの症状に対して、整形外科などで一般的に行われる治療は
・超音波治療
・電気治療
・オスグッドバンドなどのサポーターの使用
といったものが多いでしょう。
上に「周りの筋肉によって引っ張られる」と書きましたが、脛骨粗面を引っ張る原因を作っているのは大腿四頭筋(太腿の前側の筋肉)ですので、その裏側にある大腿二頭筋を緩めてオスグッドになりにくい姿勢へと導く手技もあります。
加えて、「安静にするように」と言われることが多い症状です。
しかし、このような一般的な治療法を受けてもオスグッドが治らず、いつまで安静にしていなければならないのかと悩む方が少なくありません。
その理由は、これらの治療がオスグッドの根本的な解決、つまり「オスグッドになってしまう原因」を取り除くところまでアプローチできていないためです。
痛みをなくすのはもちろん、伸び伸びと思い切ってスポーツに打ち込めるようになることが本当の解決だと言えるでしょう。
オスグッドにならない体の使い方を身に付けることが重要
オスグッドの痛みの直接的な原因は炎症ですので、冷やしたり、湿布をしたり、電気治療を受けたりすればその場の痛みは収まります。
これは、例えて言うなら繰り返し生えてくる厄介な雑草を「見えるところだけカットする」ようなものです。
庭の雑草を地面から出ている部分だけカットすれば、その日一日くらいは「あぁ、庭が綺麗になった」と気持ちよく過ごすことができるでしょう。
しかし春先~夏の終わりにかけての雑草の伸び方は、頭に来るほど早いものです(笑)。
一日経ったら緑がちらほら見えてきます。
見えないふりをして一週間でも過ごしてみてください。もう庭はボーボーです。
オスグッドの痛みを根本から解決するためには、原因から取り除かなければなりません。
つまり雑草のたとえで言うなら、しっかりと根っこから引っこ抜くこと。
もっというと、庭を土ではなくコンクリートやタイルにしたりして、雑草が生えない状態にしてしまうことです。
オスグッドの痛みを引き起こす脛骨粗面の引っ張りは、大腿四頭筋が固くなることで起こります。
オスグッドに悩む子もいれば、全くそんな痛みとは無縁で毎日生き生きとサッカーをすることができる子もいますよね。
その違いは個々人の体のつくりの違いももちろんありますが、大腿四頭筋が固くなってしまうような体の使い方をしているかどうか、も大きなポイントです。
オスグッドになってしまう子は雑草に好まれる土の庭、オスグッドにならない子は雑草など生える余地もないコンクリートの庭なのですね。
ですから、大腿四頭筋が固くなる体の使い方をしている子は、そうならない子と同じように大腿四頭筋が固くならない足の使い方、姿勢を身に付ければよいのです。
(余談ですが、たとえで「土の庭」「コンクリートの庭」と言いましたが、個人的には緑豊かな土の庭の方が好みです。雑草を抜くのは大変ですけどね・・)
同じ動作でも使う筋肉が違う!ワークで実感してみよう
「大腿四頭筋が固くならない体の使い方」と言われてもピンとこないでしょう。
また、もし体の使い方を教えてもらって覚えたとしても、そんなの身に付くの?と疑問に思う方もいらっしゃると思います。
それに、「太腿の前の筋肉を無駄に使わない!」と叫びながらサッカーをして、ヘタになってしまったら元も子もありません。
あくまで、無意識のうちに体の使い方を変えていくトレーニングをすることが大切です。
一つワークをしてみましょう。
① 立った状態から、膝を使ってしゃがんでください
これを実際にやってみて、その感覚を覚えていてください。ピンとこない人は何度かやってみてくださいね。
次に
② 立った状態から、お尻を落としてしゃがんでください
どうですか?
①と②をやってみて、どんな違いがありましたか?
・①と②は、見た目には同じ動作である
・同じ動作でありながら、力の入る箇所(抜ける箇所)が異なる
ということが感じられたでしょうか。
これが、無意識のうちに体の使い方を変えるトレーニングの一つです。
同じように「全力で走る」という動作も
① 腿を素早く上げて走る
② 踵を素早く腿の裏に付けて走る
この二つがあります。
オスグッドになってしまう子は、①の走り方をしています。
一方で、誰から言われなくても自然と②の走り方をしている子は、オスグッドになりにくいコンクリートの庭です。
そして、①と②では②の方が速く走れる方法でもあるのです。
大腿四頭筋はブレーキ筋とも呼ばれ、踏ん張ったり、止まったりするときに使われる筋肉です。
それに対して腿裏の大腿二頭筋(ハムストリングス)はアクセル筋と言われ、歩いたり走ったりするときに使われます。
腿を高く早く上げようとするのは、ブレーキ筋を使って走ろうとすることです。それより、踵を腿の裏に速くつけようとする方がアクセル筋を刺激し、体への負担が減り、かつ速く走れるようになります。
ですからオスグッドに悩む子に、②の走り方を意識してみてごらんと話すと、痛みが気にならなくなるだけでなく短距離のタイムが縮むという嬉しい副産物も得られるのです。
痛みを感じたら、それはもっと上手くなるチャンス
当院ではオンライン指導を行っているため、全国からスポーツ障害のご相談が寄せられます。
中でもオスグッドは非常に多い症状で、いろんなところで診てもらったけどどうしてもよくならない・・と思い詰めた雰囲気でご連絡くださる親御さんが少なくありません。
心配で不安で仕方ないことが感じ取れる、とっても長いLINEが送られてくることもしばしばです。
しかし、このように考えてみてはいかがでしょうか。
痛みは体が出す「体の使い方が正しくないよ」というサインである
↓
痛みを感じるということは、体の使い方を見直すきっかけになる
↓
正しい体の使い方を身に付けることで、もっともっとスポーツが上手になる
いま悩みの渦中にいる人にとっては楽天的な話のように聞こえるかもしれませんが、意識一つ変えるだけで体の使い方が変わり、あんなに痛かったオスグッドが嘘のように引いて、次の日から練習に参加できるようになったという子がたくさんいます。
大事なのは視点を変えること。
あなたが、そしてお子さんが、好きなことをもっともっと思いっきりできるようになれるようお祈りしています。
オスグッドについて解説してくださった高橋迪大先生が院長を務める「たかはし鍼灸整骨院」の詳細はこちらをご覧ください